青木務エレキベース教室WEB支部

札幌のエレキベースプレイヤー・講師による、音楽視野を1mmずつ広げられる情報を発信するブログ。

初めてのジャムセッションで大恥かいた話。

今日は世に言うクリスマス。

果たして僕は人に何がプレゼントできるかなーと考えてみた。

大物youtuberのように一億円分プレゼントや

スパイシーな社長のように現ナマプレゼントはできないのでまず除外。

やぱりミュージシャンとして活動する上で

何かタメになった話や、裏話とかかなー、とも考えてみた。

 

そこで思いついたのが、自分の失敗談。

初めてのジャムセッション参加で大恥かいた話です。

少し長いですがお付き合いください。

 

 

今でこそベーシスト、ベース講師として活動する僕ですが

2015年3月に大学を卒業するまでは、ずーーっと大学内の軽音サークルにて

月一ペースでコピーバンドをやっているのみ。

在学中はミュージシャンにもバンドマンにも、ほぼほぼ何の繋がりもありませんでした。

 

どうすればミュージシャンとしてやっていけるかなーと考え、

まずはベースの技術やミュージシャンのことを教わうと師匠につきました。

そして師匠に「セッションミュージシャンとして活動するにはどうすればいいでしょう?」と聞いたところ。

「まずはジャムセッションに行ってきな。んで恥かいてきなー」と。

 

えーーー!! 恥かくのかーーー!! 嫌だなーーーーー!!

 

と思うところですが。

「はい! 恥かいてきます!」

従順な青木青年22歳。

すぐさまジャムセッションを開催しているライブバーを探し、参加することに。

 

何の常識も知らない僕。

とりあえず知ってる、やれそうなジャズスタンダード曲数曲を

なんと手書きで、一応5人分コピーして会場に向かいました。

結果的にそれを出す機会は無かったのですが

出したらどんな反応になっていたのか、そこだけは少し気になるところです笑

 

とにもかくにも会場に辿り着きバーに入ってみると、意外や意外。

中学生~高校生くらいの子から、同世代、年上のおじちゃん達まで。

年代の幅が広い、多くの方々がいました。

そして誰も特に和気藹々と話しているわけでもなく、セッションが始まるのを緊張した面持ちで待っています。

そこに飛び込む、エレキベースをかついた青木青年。

なんだこの雰囲気は……事前に破裂する準備をしていた心臓は更に膨張する一方です。

 

 

この日のホストはサックス奏者とウッドベース奏者。

ノートに名前を書き、出番に呼ばれるのを待っててねと言われました。

なるほど、出番って指名制なのか。

それも初めて知るわけでして。

本当に初めて会った、話もしたこともない人と演奏するのは初めて。

「嘘だろ……永遠に出番来ないでくれ」くらいには思ったり。

 

さてセッションが始まり、数曲が終わった頃。

あー、みんなすごいージャズやってるーええなー。

とかぽけーっと考えていると。

「じゃあ次ベース、青木くん」

 

キタッ!!!!!!!!!!

お、俺の出番や!!!!!!!!!!!!

 

ステージに向かう僕。

一応ニコニコしながら、心臓はバクバク。

アンプにシールドを差し込む手も震えていたような。

 

トランペット、サックス、ピアノ、ドラムに、ベースの僕。

こんな編成自体初めてなもんで、当然少しワクワクもありましたが

緊張の方が遥かに勝っちゃって。

曲はまったく知らないスウィングの曲。譜面は黒本の中から探してもらった。

そしてドラマーのカウント! ついに、ついにセッションが始まる!!!!!!!

 

 

焼け野原。

あたり一帯焦土と化した。

爆心地の中心には僕一人が立っていた。

 

 

はっと記憶を辿る。

ロストに次ぐロスト。

ルートを追うこともできず。

ソロは支離滅裂。

定番の2ビート、4ビートの弾き分けなぞ知らず。

エンディングなんて、しっかりと締めれるはずもない。

 

場の空気が完全に凍りついているのははっきりと記憶しています。

やっちまったな……と思いつつ、アンプのボリュームなどを落としていました。

前の数曲の場合は、このタイミングでホストが次の出番の人を指名します。

するはずが。

 

 

「えー……ジャムセッション、自由にやるものとはいえ、人前で演奏することに変わりはありません。

あくまでそれを意識、自分の音を自覚した上で演奏をしましょう。じゃあ次の出番は……」

 

 

焼け野原以下省略。

名指しこそされませんでしたが、明らかに自分に向けられた言葉。

胸が高まり、顔は熱くなる。

その場において僕の信頼、評価が地に落ちた瞬間でした。

 

無論みなさんなら分かると思いますが、この言葉は決して僕を迫害しようとした発言ではありません。

むしろセッションの心得を教えてくれる言葉で、ホストの方の優しさが滲み出た瞬間です。

 

と、頭ではわかっていますし、今でも感謝している言葉ですが

やはりその場では恥ずかしくて恥ずかしくて。

もう照れ笑いを浮かべてステージを降りることしかできなかった。

 

 

さて、その後数曲別の方が演奏し、再び僕の出番が回ってきました。

声には出さないけど、「こいつか……」的な空気。

そして今回のフロントはトランペット、サックスの2人が中学生の女の子でした。

 

すると先ほどにはなかった現象が。

「どの曲にしますか?」

なんと、フロントの子が僕に選曲を促してくれたのです!

 

いや、もうお分かりだと思いますが。

「どれできる?」

と慈悲の心で接してくれていたのです。

 

でもこれは練習してきた曲を弾けるチャンスだ!

僕は迷わず「Blue Bossa」というボサノヴァの曲を選びました。

「テンポは?」と聞かれたので、

大体BPM=180くらいで指を鳴らしてみました。

 

 

「……もうちょっと遅い方がいいんじゃないですか?」

 

 

宇宙の始まりは138億年前に起こったビッグバンによるもの、と言われています。

そこから永い永い時間をかけて太陽系ができ、地球が生まれ、水が、生物が、そして人類が誕生し、文明が発達しました。

その138億年の有史以来一番の衝撃が、その瞬間、僕の頭に響きました。

 

これでも大学時代はぶいぶい言わせてたんだぜ。

という小さいコミュニティの中ではありますが、一応築かれた自信。

それをまさか、一歩外に踏み出した瞬間、中学生の女の子に死ぬほど気を遣われてしまうとは!

音楽、楽器を始めて以来、最も自分が情けなく思った瞬間です。

 

その後のセッションはまあ、一応は成立したものの、といった具合で。

別の曲では同じく焼け野原。今ここ、今ここと譜面に指を差してもらいながら弾いたり。

勇気出して誰かに話しかけても、話しかけてきたよ……といった表情。

恥をかく準備はしてきましたが、まさかここまで凄惨な結果に終わるとは

想像だにしてませんでした。

 

 

僕はその後もジャズセッション、ファンクセッションと色々足を運びましたが、やはり最初は上手いこといきません。

ある時は「この曲は難しいし、やるのは早かったかな」と優しーく言われたり。

ある時はホストが「ありえねーわ……」と呟いてステージを降りてったり。

悔しさと虚しさが入り乱れて、自信もなくなっていきます。

 

それでも諦めずに活動していくと、少しずつ何かを掴めてきたような。

そして運がいいことに色々な出会いがあり、少しずつライブに誘ってもらい、人前で腕を磨くこともできました。

無論その中にはひどい出来のものもいくつもありましたが笑

それでもまだまだライブもやって、セッションにも通って、継続して活動していった結果

あの悪夢のジャムセッションから3年9か月経った今

こうしてベーシストとして、そして講師として活動できています。

 

 

以上が僕の初セッション参加時の失敗談です。

ここで僕が伝えたいことはなんでしょう?

セッションは怖いということ?

新たなフィールドに踏み込むと失敗のリスクがあるということ?

いえいえ、もちろんそんなことではありません。

 

ここで言いたいのは、最初に失敗しておいて良かったということ。

そして継続は本当に大切だということ。

 

 

もし最初のセッションでホストの言葉が、中学生の気遣いがなかったら。

悔しい、もっと上手くなって参加したい! という気持ちは生まれなかったかも。

そしてそもそも失敗しなかったら、できるからいいや、と表面だけなぞって終わっていたかもしれない。

失敗したからこそ、自分に必要なもの、足りないものが痛いほど分かった。いや、分からせてもらった。

失敗したからこそ、じゃあ良い演奏をするにはどうすればいいかと探求心を持てた。

何度失敗しても、失敗しっぱなしじゃなく、立ち上がって継続したからこそ今がある

そう僕は信じています。

 

 

だからこそ、中、高、大学生でセッションに参加したりライブに参加してる人は心底すごいなと思いますし

逆に今から失敗しまくれる人は心底羨ましいです。

もしも今、失敗のリスクを恐れて一歩踏み出せない人がいたら、是非その一歩を踏み出してみてください。

そして今こそこの言葉を贈りたい。

「恥かいてきな!」