ベーシストが「頼もしい~っ!」と思う鍵盤奏者の共通点
集中短期連載「#頼もしくて恋するシリーズ」 の第3弾です。
ドラマー、ギタリストときて、今回は鍵盤奏者!
ピアニスト、キーボーディストですね。
が! 実は具体的に解説していく以前なんですが。
鍵盤って、ハッキリ言ってその場にいるだけでむちゃくちゃ心強いんです!
ピアノやエレピ、クラビ、パッドからストリングスetc......
例え音色1つだけだとしても、いるだけで曲の世界観をひたすら広げに広げてくれる。
いるだけで心強い存在、それが鍵盤奏者です。
と言っても、やはり具体的には書いていきますが笑
では、どんな点で特に頼もしさを感じるかといいますと
ベーシストが「頼もしい〜っ!」と思うピアニストの共通点🎹
— 青木務@エレキベーシスト (@tsutomushi_) February 2, 2019
①リズム楽器ばりのバッキングをしてくれる。
②素敵オブリも入れてくれる。
③左手の低音を配慮してくれる。
④無限のボイシングで華を添えてくれる。
⑤ベースソロの際はppからffまで。
特に④⑤で恋します🌸#頼もしくて恋するシリーズ
ベーシスト目線でこのような点に頼もしさを感じます。
では、これらがどのようなことなのか1つ1つ書いていきましょう!
①リズム楽器ばりのバッキングをしてくれる
ベーシスト目線で一発目にくるのは、やはりバッキングのことになりましたね。
ピアノでもキーボードでも、あくまで鍵盤はウワモノ。
ですが、とても頼れる鍵盤奏者はもうベーシスト、ドラマー顔負けのバッキングをしてくれます。
具体的に気持ちよいポイント。
それは音価です。
音価とは、単純に言えば音の長さですね。
ものすごく頼れる鍵盤奏者は、この音価の感覚が鋭いように感じられます。
4分、8分、16分音符。
どんなテンポ、どんな曲調でも絶妙な音の伸ばし具合、切り具合を実現してくれる。
それがハマるほどに他のパートもきれいに活きてくる。
鍵盤奏者のバッキングの気持ちよさの秘訣はここかなと思います。
ベースでも同様ですが、それについては技術も必要ですが、やはり意識一つですね。
あくまで「『決まった演奏をする』のではなく『バッキングをする』」という意識。
この意識がバッキングの気持ちよさに直結しているのかなと感じます。
②素敵オブリも入れてくれる
上にも書いたように鍵盤はウワモノ。
もちろん常にコード弾きに徹しているわけではないですよね。
曲によっては、「この隙間に何か一つフレーズ差し込むと気持ちいいな~」という場所があります。
そこで我々ベーシストは無力。あまりにも無力。
自分が行ってしまっては、ボトムを支えるものがなくなり、アンサンブルが寂しくなってしまう……。
そんな葛藤に悩まされたりします。
そう、「隙間に差し込むフレーズ」には役割があるのです。
ベースでは残念ながらその役割を全うすることができない場面も多々あります。
例えばギターがいても、「ここはギターではない」という場面もありますね。
そんな瞬間に、鍵盤奏者がそのバランスを察してタララララっとフレーズを入れてくれることで全てが良い方向に向かいます。
頼れる鍵盤奏者はめちゃくちゃバランス感覚が良いと思います。
ここは行く場面、ここは控える場面。
ここは自分ではなくてはならない場面。
そういったバランス感覚や嗅覚で音を出してくれる。
そこにベーシストはやはり頼もしさを感じるのです
③左手の低音を配慮してくれる。
ベーシスト目線でとても繊細になってしまうのがこれですね。
鍵盤奏者の左手で出される低音!
ここがベーシストが担う音域とガッツリ被ってしまうので、とても敏感です。
ピアノは西暦1700年頃に生まれ、対するフレット付エレキベースが生まれたのは1951年。
新参者のベースが、ピアノ先輩の音域にお邪魔させてもらっている感じではありますが笑
音楽の種類とそれにおける役割の話ですね。
話を戻して、例えばポップスでもロックでも、ソウル、ファンク、R&B、ジャズ、レゲエetc......
様々なジャンルがありますが、ベースと鍵盤が共存する場合、基本的には低音を担うのはベースですね。
そこであえて悪く言えば、鍵盤が1人で伴奏するときのように低音もガンガン出して、リズムを付けて弾きまくっては、お互いの良いところを消しあってしまいます。
せっかくカッコいい左手も、ベースの弾いている音域と被りまくって、音が濁りあったり。
しかしベースも低音をキープしたいし、上の音域に避難するわけにもいかず。
結果、何やら低音がこちゃこちゃして聞こえにくいアンサンブルになってしまいます。
頼もしい鍵盤奏者はこの「配慮」をしてくれます。
「あ、この音域で動いたら被るよね。ちょっとどけるわー」
と、ちょうど被らない音域でプレイしてくれるので、ベースもすっきり聴こえ演奏しやすくなります。
この「配慮」にこそ頼もしさを感じます。
もちろん、低音域に突入してはいけない、ということでは決してありません。
例えばソロ中にあえて低音域で弾きまくって刺激を与えてくるですとか。
ベースのリフと同音域でユニゾンして、そのフレーズをより強固にするとか。
そうした「手法」もキッチリと必要な瞬間に出してくれます。
この項目は他のパートの方がこのシリーズをやったらもしかすると出てこない項目かもしれない。
まさにベーシスト目線から見て頼もしさを感じる項目ですね。
④無限のボイシングで華を添えてくれる。
反対にこれは全パート、そして見ている方も頼もしさを感じるのではないでしょうか。
鍵盤奏者のボイシングです。
鍵盤奏者は両手両指を使い最大で10個の音を同時に鳴らすことができますね。
顎や肘も使えるぜ! という話を1回置いておきます笑
そして音域は88鍵の場合は約7オクターブ。
4弦のエレキベースの場合大体3~4オクターブ、かつ音数は同時に4つまで。
比較にならないレベルでボイシングの幅は広いですね。
そんな鍵盤の無限ともいえるボイシング。
めちゃくちゃ便利だと思ったでしょう?
ところが、恐らくそのボイシングの選択ってすごく難しいと思います。
「ちゃんと指定されたAm7を鳴らしてるのに、なんか違うな」
「9thとか#11thとか、テンションってどこに組み込む? 全部入れたら何か濁る!」
「出してる音自体は間違ってないけど、ものすごく違和感」
コード楽器にはあるあるなんじゃないかと思います。
そう、その状況や曲調、流れにあったボイシングが存在し、反対に合わないボイシングも存在します。
どういった種類の音色なのか、音域の広狭、どの帯域で弾くか、コードを弾くでもどの音を入れるか、削るか、トップノートはどうするか……。
その他様々な注意を払う点があります。
頼もしい鍵盤奏者は、どんなジャンルでもどんな曲調、さらにどんな編成でもボイシングを掴むのが巧いと感じます。
相応しいボイシングで曲を彩り、歌いやすさ、演奏しやすさを助長してくれたり。
さらに誰もが想像だにしないボイシングをさらっと入れてきたり。
場のテンション感に合わせてくれたり。
感覚なのか経験なのか、このボイシングに間違いがないですね。
ある意味3.の低音の話にも通ずる話です。
そんな無限のボイシングで曲を彩ってくれる鍵盤奏者には思わず恋心を抱いてしまいます。
⑤ベースソロの際はppからffまで。
さて、最後はダイナミクスの話。
これもあらゆる点で大事ですが、ツイートの時点ではあえてベースソロと書きました。
というのも、これはベーシスト目線ですが、ベースのソロってやはり特殊です。
なんせこれまでアンサンブルをベースを中心に作っていたのに、その中心がソロで弾き始めるわけです。
ということは、局面がガラリと変わるといっても過言ではないでしょう。
そこで鍵盤だけには限りませんが、それまでと全く同じテンション、同じフレーズでバッキングを続けてしまうと……?
どうにも不思議で不自然な、何がメインなのかわからない時間になってしまいます。
そこでテンションをすっと下げ、音の隙間を作る、ダイナミクスを落としてくれると、とても頼もしい!
落し具合は状況によって異なりますが、pp(ピアニッシモ)くらいまで落してガッツリベースをフューチャーしてくれると、とっても弾きやすく、また場面が変わった感も出ます。
観ている側、演奏する側どちらにおいてもとても有難いことなのです!
これは他のすべてのパートがソロを取る時、他のすべてのバッキングに回るパートにも言えること。
もちろんこれを書いているベースにもです。
客観的に見てどんな場面か、どのように演奏すれば聴こえやすいか、演奏しやすいか。
それを常々に考えていくと、自然とダイナミクスは決められていきます。
最後に
今回は鍵盤奏者に着目してお届けしました。
冒頭にも書いたように、鍵盤奏者はいるだけで既に頼もしいです。
そしてどこが頼もしいのか一言で、と聞かれると。
バランス感覚
これに尽きると思います!
素敵なキーボーディストの皆さんに備わっているその嗅覚。
むちゃくちゃ大事にしてほしい。
そして、少し分け与えてほしいくらいです笑
これからも虹色の演奏で楽曲を彩ってくれること願って!