ベーシストが「頼もしい~っ!」と思うドラマーの共通点
僕がTwitterで稀に更新しているツイートに「#頼もしくて恋するシリーズ」というタグシリーズがあります。
「ベーシストの目線から見てこういうプレイヤーはすごく頼もしいぜ!」
と思う項目をパート別に箇条書きで端的に書き出しているシリーズです。
その第一回は「頼もしいと思うドラマーの共通点」。
ベーシストが「頼もしい〜っ!」と思うドラマーの共通点🥁
— 青木務@エレキベーシスト (@tsutomushi_) January 24, 2019
①周りの音をよく聴いてくれる。
②ダイナミクスを敏感に察してくれる。
③ベースの"キープ"を感じてくれる。
④アンサンブルをドラマティックに彩ってくれる。
⑤自分のスキルより周りとの会話を重視してくれる。
特に④⑤で恋します🌸
もちろん人によって意見が異なると思いますが、僕はこうしたドラマーに特に「頼もしさ」を感じています。
ただ悲しいことにツイッターの文字数制限は140文字。
その中でこれらすべてを具体的に説明することは残念ながら不可能……。
なので今回はこれらの項目が具体的にどういうことなのか解説をしていきます。
ベーシストもドラマーも、もちろんそれ以外のパートの方々も是非ご覧になって、考えてみてください!
周りの音をよく聞いてくれる
「アンサンブルは周りの音をよく聴くといいよ!」
という意見は、楽器を弾いている人ならば一度は聴いたことがあるのではないでしょうか。
これはまさにその通り!
周りの音を聴くことは非常に重要です!
ただ、周りの音を聴くってどういうこと?
何をすれば周りの音を聞いていることになるの?
という疑問を持たれることは当然でしょう。
そもそも周りの音を聴くとは何でしょうか?
アンサンブルに参加し始めた人は大体以下の手順で成長していくと思います。
- 自分の演奏をすることにせいいっぱいで、自分の音しか聞こえない。
- ちらほら周りの音が耳に入ってくる。
- 周りの人がどんな演奏をしているか分かる。
- 周りの音に合わせられるようになる。
大体みなさん心当たりのある内容ではないでしょうか。
ではこの「4.周りの音に合わせられるようになる」の状態になるのが最も良い状態なのか?
実はそうではありません! むしろこの状態が最も危険かもしれません。
この4.の状態のプレイヤーは、つい周りのプレイに合わせることができるあまり、それが快感になってしまうことが多々あります。
3連符が少し聞こえたらすぐさま3連符で対応。
一瞬アウトしたらすぐさま超絶テクで対応、などなど。
もちろんそれらを行える技術を習得するためには気が遠くなるような特訓と場数が必要になってきます。
が、それらを客観的に見たときにどうなのか?
それまでの流れや音楽そのものを壊してしまっていないか?
他の人の演奏しやすさを度外視してしまっていないか?
という話に繋がってきます。
実は4.の先が存在します。
それは「5.客観的に状況を判断した上で周りの音に合わせられる」です。
それはこれまでのアンサンブルの流れや状況、他のプレイヤーの出す、感じているリズム。
さらに大きく捉えて、その場の雰囲気やライブの進行等すべて含めてです。
こうしたことをすべて含めた表現が「周りの音を聴いてくれる」です。
これらを考えてくれるドラマーの頼もしさは、もはや不落の城。
全幅の信頼を寄せ寄り掛かれるベッドみたいなものです。
ダイナミクスを敏感に察してくれる
1つ目がこってりした内容の分、他4項目はそれらに追随する内容です。
中でもこれはあっさりした話。
そのまんま、アンサンブルの強弱、音量の大小を敏感に察して音量をコントロールしてくれることです。
「ここで落としてほしい!」
「ここからガツンとあげようぜ!」
というタイミングを、セクション、展開からのみではなく、文脈や周りのテンションに合わせてすっとコントロールしてくれる方はとてつもなく頼もしい!
同じ方向を見ている感覚は、アンサンブルをより豊かに、楽しいものに変化させてくれます。
そしてそれは「他のプレイヤーの演奏のしやすさ」→「見ている方の心地よさ」に繋がります。
ベースのキープを感じてくれる
これが1.2.の話からすると、「ある種の矛盾」を孕む内容です。
先に言ってしまうと、ベーシストはドラマーに「女の子のしてほしいことを、言葉ではなく雰囲気で察してくれる大人の男」になってほしいのです。
ベーシストは編成やその曲のリズムや雰囲気によって
「ここは俺が動くべきではない。ほぼ同じフレーズを弾き続けてキープに徹するぞ」
と判断することがあります。
この時、ドラマーからしたら
「あれ!? ベース全然動いてくれない!? じゃあ俺も控えておこうかな……」
1.2.の話を踏まえたらこう判断するのも妥当ですよね。
しかしベーシストも時にワガママなのです笑
実はずっと同フレーズをキープしている瞬間は
「今は俺がキープするからドラムでがしがし攻めたってくれ!」
と感じているのです。
ベースのどこからどこまでがキープなのか、どこが攻め時なのか。
どう感じているのか。
それらを「なるほどね」と察してガッチリ盛り上げてくれたり波長を合わせてくれるドラマーは非常に非常に頼もしかったりします。
まさに「女の子のしてほしいことを、言葉ではなく雰囲気で察してくれる大人の男」
ですね笑
「私の言いたいこと、わかる?」という恐ろしいセリフを内に秘めているのがベーシスト、なのかもしれません……。
アンサンブルをドラマティックに彩ってくれる
これは願い事と同時に「ドラムの役割」といっていいかもしれません。
ある曲を演奏するにあたって、感動をさらにプッシュできるパートは何なのか?
やはりベースが我先にと奮闘しまくったって限界があり……むしろナチュラルな感動からは遠ざかっていくかもしれません。
ギターや鍵盤で音を足しまくっても、また別ですね。
やはり人間の根源的な衝動や感動を自然と呼び起こしてくれるのは打楽器の力なのです。
音楽における構成要素の一つであるビート(Beat=鼓動、拍子)をバンドの中で特に操ることのできるドラム。
繊細なダイナミクスや細やかな音の強弱、展開を示唆するだけではなく、感情を直に刺激してくるフィルイン。
それらを全て楽曲のために操り、ナチュラルに楽曲のドラマ性を高めてくれる。
ベースは全音符、もしくはルートのみを刻み、ギターはコードストロークのみ、鍵盤は白玉でコードを弾いているのみ。
そんな状況でも楽曲にドラマを持たせてくれるようなドラマーは頼もしすぎて、もはや恋。
恋心を抱いてもおかしくはありません。
自分のスキルより周りとの会話を重視してくれる
今までの話を全てひっくるめ、最後にこれになります。
「自分のスキルより周りとの会話」ですね。
1.では客観的に全体を見渡し、自分のプレイを選択してくれる人が頼もしいと説明しました。
2.では、ダイナミクスを操り歩幅を全体で合わせることでアンサンブルが豊かになることを。
3.ではベースのキープ、ベーシストの気持ちや心情すらも察してくれることへの頼もしさ。
4.では音楽の彩りに不可欠なドラムの役割を説明しました。
これらの項目、実は全てドラマー自身の方向を向いていないのです。
全ては全体との調和、そしてそのアンサンブル、音楽自体をよくするためのものです。
そこに、個人のスキルのアピールは実は必要としていないのです。
これは決して「個人のスキルはなくても構わない」という意味ではありません。
上に示した内容を察して実現できること自体がスキルです。
そしてスキルによってアンサンブルをより豊かに、よりスケールの大きいものにできます。
ただし、「練習してきた必殺フレーズをここぞとばかりに放出するようなプレイ」。
これは、周りとの会話よりも自分のスキルを重視している状態でしょう。
ドラムだけに限らず、ベースも、他のパートも、必殺フレーズを出したいがために出すのではありません。
その必殺フレーズが必要な瞬間、求められる瞬間に繰り出すことが大切なのです。
様々な意味合いでも、大切なのは周りとの会話。
それを常に考えながらプレイできると、派手な32分音符や複雑な6連符のフレーズなどが無くても、必然的にアンサンブルは良いものに変化していくでしょう。
最後に
今回の内容は以前ツイートした「頼もしいドラマーの共通点」を掘り下げて解説しているものなので、決してドラマーを攻撃したり、批判しているものではありませんので誤解なきよう。
むしろドラマー以外のパートにおいても非常に重要な事柄です。
リズム隊という観点からよりドラマーに求めたくなる項目ではありますが、全てのプレイヤーに共通して言える項目です。
ドラマーもベーシストも、ギタリストもキーボーディストも、みなこれらを意識してみてください!
すると人から「頼もしい!」と思われる演奏ができることでしょう!