青木務エレキベース教室WEB支部

札幌のエレキベースプレイヤー・講師による、音楽視野を1mmずつ広げられる情報を発信するブログ。

M-1グランプリ2018の審査員コメントを音楽に例えてみる~立川志らく編②~

前回のM-1審査員コメント志らくさん編の続きです。

 

志らくさんの評価基準として「発想>技術」が根底にある、と前回の記事で書きましたが、その前提の上で各コンビに対するコメントを見ていくと面白いです。

 

ジャルジャルに対し99点を出して物議をかもした一件がありましたが、そのコメント内容をまとめると「見てて一つも笑えなかった。けどものすごく面白かった。プロの芸人を笑わせる芸なのかと感心した、惹かれた」というものでした。

実はこの後オール巨人さんも「何がおもろいか分からなかったけど、面白かった。ずっと同じことを長くやって、そこからさらに面白くなる。継続が笑いになる、天丼の典型」と、「笑えないけど面白かった」という旨の審査を下しています。違いは具体的に継続が笑いになる(=天丼)と説明しているところですね。

他にもプロの芸人さんのみ分かる「プロを笑わせる」ポイントはいくつかあったのでしょう。

また司会今田さんと巨人さんのやり取りの中に「新しさもあったけど懐かしさ」もあるという言葉も出てきましたが、さながら現代の音楽の基礎となっている古い音楽を新しいものに昇華した(=発想)ような、10年代以降の凄腕若手ミュージシャンを観た時のような衝撃も高得点につながったのかなと思います。

 

発想という意味では、ミキに対しては「今日の中で一番素晴らしいし、今後数十年漫才師として生きていくと思う。ただもっと心が揺れるような新しい発想が欲しかった」とやはり発想に着目し89点。対しトム・ブラウンに対しては「意味も全く分からないけど衝撃を受けた。ものすごくガックリしている(予選敗退決定)けど、今後も追いかける」と、97点とこれまた高得点をつけています。

古今東西色々なものを知っているからこそ、常に新しいを求め、好む。クリエイティブで我が道を突き進む個性を積極的に評価するその姿勢は、まさにミュージシャンが目指すべき姿勢、育むべきだと感性だと思います。

 

また他のコンビに対しても、ギャロップにはM-1という場においてのネタ選びの指摘。霜降り明星には近代的で程がいい、大衆は食らいついていると現状と客観的な視点。和牛には、品があるから「ゾンビ、殺す」など刺激の強い言葉でも楽しく聞ける。と、それぞれアドバイスをしていましたが、これら全てミュージシャンにも活かせますね。

ハコや場にそぐう、制限時間にきちんと収まる選曲、大衆ウケの大切さ、品の大事さ、MCの秘訣などもろに当てはまりませんか?

こうしたクリエイティブな発想にまず着目し、その上で技術や現場での知恵、芸にまつわることを的確に指摘してくれる方が審査員で、そしてそれが地上波で流れて、とても良かったと僕は思います。